久保九段インタビュー 第3部 番外編
2013.04.27
第三部まで来ました!番外編~教えて!久保九段~です。照楠会将棋担当となった樫村です。将棋担当となるからには理由があるわけで、何を隠そう私の趣味は「将棋」なんです。去年の秋から始めたのですが、本当に面白くて趣味になってしまいました。まだまだ棋力は弱い私ですが、疑問に思っていることなどをインタビュー中にお聞きしてしまいました(笑)将棋を指される方もはもちろん、将棋を指したことが無い方もプロ棋士とアマチュアのギャップをお楽しみください!
樫村:ものすごく個人的なことで申し訳ありませんがお聞きしたいことがあるんです。久保九段は「将棋年鑑」で好きな駒は「左桂馬」とお答えになっていました。私は矢倉でも四間飛車でもいつも左桂馬の使い方がわからないんです(笑)
久保:桂馬は歩で取られやすいので、一番警戒しないといけないんです。だから確信を持たないとピョンピョン飛んではいけないんですよ。絶対に取られないという感覚を身につけるまでが結構大変なんです(笑)
樫村:チェスだとナイトにあたりますが、将棋はチェスと違って後ろに下がれる駒が少ないですよね。精神性と言いますか、和風のものと洋風のものでは違うなと感じますね。
久保:そうですね。そういうこともありますし、将棋は世界で唯一取った駒を使うという再利用の精神があります。日本らしい精神だと思いますけど、いつまでも駒が減らないのでコンピューターも勝ちづらい領域でしたが、ここまで来ちゃったという感じです。
樫村:私の祖父も将棋を指すんですけど、そういう話をしたらワシはそういうことは考えたこともなかったと言っていました。今祖父に負けてばかりなので、いかに祖父に勝つかということばかり考えています(笑)
根井:おじいさんは将棋強いの?
樫村:子どものころによく指していたみたいですね。
久保:そういう方多いですよね。僕の父と祖父が縁台将棋を指していて、それを見て興味を持って僕もスタートしているんですよ。
樫村:。私の祖父は攻め100%なんです(笑)僕はガチガチに囲いたいタイプなんで、気がついたらいつも攻め込まれているという感じなんです。
久保:いろんな将棋がありますからね。ずっと攻めている人もいれば、ずっと受けている人もいますね。
樫村:祖父は必ず初手2六歩なんです。なので相掛りになるんですが、相掛りは苦手で(笑)
根井:なんだかんだ君もすごいね(笑)
樫村:いえいえ。私は単なるファンですから。ニコニコ動画の将棋中継なんかでカキコミしますけど、三浦弘行八段のことを「みうみう」なんて呼んだり、安食総子女流初段のことを「あじあじ」なんて呼んだりしていますよ(笑)
久保:呼ばれていますね(笑)
樫村:一番最初に将棋を覚えたときに「棒銀」か「四間飛車」かという選択で、僕は棒銀を取ったのですが初心者にわかりやすい戦法とかはありますか?
久保:やっぱり棒銀なんかは良いと思いますよ。どうやったら敵陣に入っていけるかという感覚も覚えられますし、逆に入れないような手筋も覚えると思います。わかりやすいのがはじめは良いのかなと思います。
樫村:棒銀でいつも1筋で歩に捕まってしまうんですが、あれはやはりしかたないことのなんですか?
久保:あれはやっぱり一回は通る道なんで(笑)、そこで成功例と失敗例を知ればさらに上達できると思います。
樫村:祖父と将棋を指していて「垂れ歩」をすると、そんなことしてて大丈夫か?と言われて、いつも「垂れ歩はすごいんだ!」って言い返すんです(笑)
久保:と金ができたら強いですからね。
樫村:「と金」大好きなんです(笑)弱い駒が金になるっていうことが良いんです。5筋の歩がと金に成ったら「よっしゃ」って思いますね。僕はある漫画で「矢倉」が出てきたのを見てから矢倉が好きなんです。「矢倉は将棋の純文学」とも言われていますし。でも矢倉は横が弱いので悩んでいます。
久保:矢倉は確かに下が弱いですよね。7九や8九あたりが狙われやすいので、飛車を2枚渡したら早いですよ。
樫村:いつも(矢倉に組むと)桂馬を跳ねられて玉頭の銀が狙われてしまいます。そうするとどうしても(銀が)上がらざるを得なくなって囲いが薄くなってしまいます。「銀将」が好きという人は多いと思うのですが、(銀は)横腹が弱いので僕としては使いにくい駒なのですが、どうやったら銀を上手く使えますか?
久保:攻めの銀と守りの銀をどうやって形よく使えるかということになるんです。さっきの棒銀なんかでも、2六の銀がどっちにも行けずに使えず終わるというパターンが一番まずいんです。取られてもいいので、何らかの駒と交換であればその銀は十分役立っています。攻めの銀と守りの銀であれば守りの銀を取られる方が痛いので、矢倉であれば3三の銀を取りに行くのがいいかと思いますね。
樫村:3七銀からどちらに行こうかと悩んでるうちに桂馬の跳ねる時期を逃しているんです。腰掛け銀にしようかと悩んでいたらいつの間にか相手の銀が来ているので、上手く銀を使えるようになりたいです。
久保:桂馬が弱点になりやすいので、それを攻めの銀でカバーしてあげる。たとえば4七銀なら3七に桂馬がいれば一応3六の地点を4七でカバーできているじゃないですか。桂馬は歩で取られやすい駒なので、桂馬の周りにはなるべく銀を配置しておいてあげるのが基本なんです。
樫村:香車とかも上手く使いたいのですが…。特に矢倉では、右香なんかが使いにくくて。
久保:香車は捨てていくんですけど、そのタイミングが相当難しいんですよ。一番良いタイミングで捨てていきましょう。あと、はじめは居玉で5七に「と金」を作られて4七桂馬で負けるっていうことがよくありますよね。
樫村:何回も負けました(笑)あと角道をあけてから銀を上げてしまって角成りで一発アウトというのも何回もありました。初心者がよくする間違いですね。
久保:玉がどこに動けるのかということを常に確認しておいた方がいいんです。居玉なんかだと金が両隣りにいたら、動ける地点は3通りしかありませんよね。玉頭に「と金」が来たら動くところが基本なくなりますよね。そういう時に一番詰まされやすいのが桂馬なんです。4三に「と金」がいても、桂馬を打たれても6ニに行けるので詰みません。そういう距離感みたいなものを常に持っていれば一応詰まされにくくなりますね。
樫村:最近は顔面受けなんかをよくしてしまいます。こんな手でいいのかなと思うんですが、玉って意外に強い駒なのでつい頼ってしまいます。
久保:そうですね。強い駒ではありますけど、金銀3枚で守ってあげるのが基本なんです。あとは飛車・角・銀・桂で攻めます。「玉の守りは金銀3枚攻めは飛車角銀桂」という格言もありますから。それは昔から変わりませんね。やはり定跡を覚えて得意戦法を持つのがいいですね。
樫村:では私は矢倉でウナギ屋を目指します。
第3部 番外編「教えて!久保九段」 おわり
いかがでしたでしょうか?職権乱用だという声も聞こえてきそうですね(笑)3回に渡って久保九段へのインタビューをお伝えしてきました。話題の順番や言葉尻などの若干の修正はありますが、できる限り会話の内容を忠実に再現させていただきました。これを機に将棋を指したことが無い方も駒を手に取ってみてください。パチンっと駒を盤に打ちつけただけでも、プロ棋士になったかのような高揚感が得られるかもしれません。
最後に私が今回のインタビューで最も感動した瞬間を1つ挙げたいと思います。電王戦の棋譜中継を携帯で久保九段が私に見せてくださったのですが、クリックひとつで画面の駒が進みます。その速さたるや…。カチカチとクリックするのではなく、ボタンをグッと押したまま画面はパラパラパラパラーっと進みます。そんな一瞬でも久保九段はしっかりと形勢を読み取られ、少しばかり解説してくださいました。A級棋士の凄さを目の当たりにして猛烈に感動いたしました。
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